両校ともアイビーリーグとして名高く、超一流校ですが、日本ではC大学のほうが何故か知られています。 本人がカリキュラムの内容や、大学の所在地の条件などを考えに入れた上で、P大学のほうを選びました。
C大学は、彼が2年間過ごしたところと同じようにニューヨーク州のすごい田舎にあるので、彼はP大学のあるフィラデルフィアに行きたかったのかも知れません(これは私の推測です)。 本人がP大学に決めたとき、父親は「C大のほうが有名でいいように思うから、ちょっと惜しかったなア。
でもまあいいや、本人が決めたんだから。 ネ、先生」と一言、つぶやいたのです。
本当はとっても惜しかったのかもしれません。 でも、男として腕一本で生きてきた、ここがお父さんのキップのよさです。
息子にグチャグチャ言うことはありませんでした。 TがP大に入学してからのことです。
何しろ田舎の小さな大学から超一流校に移ったわけですから、彼がもっていた単位数を随分減らされて、3年生ではなく、2年生に入学するようなことになりました。 すわっ、大変!卒業が遅れればそれだけ費用の負担がお父さんにかかると彼は思ったことでしょう。

なにしろこういったアイビーリーグは普通の大学より何でもかんでも高いのです。 本人は多少うろたえましたが、私が言ったのは「そんなことでガタガタするな。
1人ひとりの先生に交渉してみればいいし、単位が残ったって、卒業が遅れるとは限らない」という意見でした(カウンセラーはこういうとき、長年の経験に裏打ちされた落ち着いた態度が肝要です)。 お父さんはいつも「がんばれ!」と言ってくれたのです。
本人は1つ1つの科目の先生と交渉を始めました。 数学の教授は「ではテストを」と言ったそうです。
日本人にとっては得意中の得意の数学(一般教養課程の数学はとてもレベルがいので、日本人はみんな一番です)。 スラスラと解いてみせて、見事、数学の単位は勝ち取ったのです。
音楽の教授は、「では、ピアノの向こう側にすわりなさい」と言ってばんばんピアノを弾き、「この音楽の作者は?」「この音楽が作られた背景は?」などと、次々質問を浴びせかけたのだそうです。 彼はまったく答えられず汗びっしょりであったとか。
教授いわく、「わがP大学の教養課程の学生はこれぐらいの知識は充分に備えている。 よって君の音楽の単位は認められない」とのおおせでした。
かれはこういったアメリカの1つずつ納得する方法を、身をもって学びました。

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